繰上げ受給は意外とお得? 60歳から年金を受け取る3つのメリットについて

ゆるり

ゆるり です。
制度とお金の専門家。
令和7年度社労士試験合格、
FP2級、年金アドバイザーの資格を所持。
市役所にて約10年間、社会保障制度の運営に従事しておりました。
これまでの経験を活かして、皆さんにお得な制度やお金の情報をお届けします!

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年金は65歳より前から受給できることを、皆さんご存知ですか?

65歳前から特別支給の老齢厚生年金を受給する方もいるかとは思いますが、恐らく多くの皆さんが、「年金とは65歳から受給するものだ」とお考えかと思います。

ですがある程度、年金制度をご存知の方であれば、年金の「繰上げ受給」と「繰下げ受給」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。

年金額を下げる代わりに、年金受給開始年齢を65歳より前に繰り上げて受け取ことができる繰上げ受給。それとは逆に、66歳以降に受給開始年齢を繰り下げる代わりに、通常よりも高い年金額を受け取ることができるのが繰下げ受給です。

今回は、意外と知られていない「繰上げ受給」のつのメリットについて、紹介していきたいと思います。

繰上げ受給ってなに?

老齢年金は、通常65歳から受け取ることができますが、希望すれば60歳から65歳になるまでの間に繰り上げて受け取ることができます。ただし、繰上げ受給の請求をした時点に応じて年金が減額され、その減額率は一生変わりません。

ちなみに、その減額率というのは次のとおりです。

減額率(最大24%)= 0.4%× 繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数

引用:日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-01.files/hayami_S37.4iko.pdf

ですので例えば、65歳から受給できる年金額が年額100万円だったとすると、60歳0ヶ月から繰上げ受給した場合24%減額されて、年額76万円の受給が生涯続くことになります。

メリット① 寿命によっては年金総額がお得!

繰上げ受給によるメリット1つ目は、寿命によっては繰上げした方が、総支給額が高くなる可能性があることです。

当然のことではありますが、繰上げ受給は長生きする人にとっては総支給額の観点で損してしまう制度であるのと同時に、健康に自信がなく、早くに寿命を迎えてしまう方に関しては、結果的に65歳から受け取るよりも総額が大きくなることがあります。

では実際、何歳まで生きれば、65歳から受給した方がお得になるのでしょうか。

ここで登場するのが「損益分岐点」という考え方です。

年金制度における損益分岐点というのは、老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給開始年齢を繰り上げまたは繰り下げした場合の受取総額が、65歳から受給した場合と比べてトータルでどう変わるかを示すものです。

60歳から受給した場合と、65歳から受給した場合の損益分岐点は、80歳10ヶ月ですつまり、81歳より前に寿命を迎えてしまった場合、繰上げ受給していた方がお得だったという結果になるわけです。令和5年の日本人の平均寿命は、男性が81歳、女性が87歳でした。死亡率は70歳を超えると、急激に上昇します。令和3年簡易生命表によると、男性なら75歳前後には4人に1人が亡くなり、平均寿命である81歳には約半数が亡くなります。

この結果を踏まえた上で、皆さんはどうお考えになりますか?

メリット② 税金や社会保険料が安くなります

老齢年金は受給する時に税金が課税される、いわゆる課税年金ということをご存知でしたか? 

老齢年金に税金が課税されるとどうなるかと言いますと、本来受け取る年金額から、税金や社会保険料などが天引きされ、手取りとして受け取る年金額が少なくなります。お給料から社会保険料などが天引きされるのと、イメージとしては同じです。

具体的にどれぐらい税金などが安くなるかについては、別記事「繰上げ・繰下げ受給をすると、天引きされる税金や社会保険料はどれぐらい変わるの?」にまとめますので、良ければ合わせてご覧ください。

メリット③ 健康保険証の負担割合が低くなる可能性があります

病院に行かれる際、皆さん健康保険証を提示されると思います。

75歳以上の方が病院で後期高齢者の医療症を提示すると、病院での負担割合が1割、2割、3割のいずれかの割合に減額されます。ですが1割負担と3割負担って、考えてみれば3倍も医療費に差があるわけですから、かなり大きな違いですよね。

この負担割合というのがどのように決められているのか、皆さんご存知でしょうか?

それでは、大阪府後期高齢者医療広域連合のホームページを参考に確認してみましょう。

医療機関窓口での自己負担割合は、一般の方は1割、一定以上の所得のある方は2割、現役並み所得者は3割となります。

引用:大阪府後期高齢者医療広域連合 https://www.kouikirengo-osaka.jp/longlife/selfload.html

自己負担割合は、4月から7月までは前年度、8月から翌年3月まではその年の年度の住民税が課税される所得額を用いて判定します。

いろいろと特例はあるので原則的なお話にはなりますが、課税所得が145万円を超えてしまうと、医療証の負担割合は3割負担になってしまうんです。

年金の場合、所得ではなく収入というのがポイントです。年金額が少額の方なら問題ないかもしれませんが、65歳から受給する、もしくは年金を繰下げ受給することで、この基準額を超えてしまう方は、十分に注意が必要です。

あの時、繰上げ受給をしていたら、今頃病院に1割負担で通院できていたのに・・・そんな風に後悔しないためにも、年金受給開始の年齢は、慎重に検討していきたいところですね。

もちろん、繰上げ受給にはメリットだけではなく、デメリットもあります。

デメリットについてはこちらの記事でまとめますので、良ければ参考にしてみてください。

以上、ゆるりがご案内しました。

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